白身魚を原料とした練り製品「八重山かまぼこ」は、八重山独自の製造方法と調理法があり、石垣島の名産品として多くの人に愛されています。ビールや泡盛のつまみに、子どものおやつに、お祝い事の場にと、暮らしの中でさまざまな場面で料理に使われ、幅広い層の人々に食されています。
昭和9年創業石垣島の銘産品八重山かまぼこの店『かみやーき小(かみやーきぐゎー)』は、全国かまぼこ品評会にて日本一の農林水産大臣賞を受賞している石垣島のかまぼこ専門店です。
初代創業者のカマドさんは、海人(漁師)の夫亀寿(かみじゅう)さんが海から獲ってくる魚を、バーキ(カゴ)に入れ頭にのせて売りに歩いていました。残った魚を無駄なく最後までおいしくいただくため、カマドさんは試行錯誤を繰り返しながらかまぼこ作りを始めました。
当時沖縄本島や宮古島などから石垣島へ渡ってきた人々は、開拓者も含め貧しく、苦しい思いをしている人がたくさんいました。懐が深く人情味のあるカマドさんは、お腹をすかせている人たちへ、かまぼこを分け与えていたそうです。
「お金のある人からは代金をもらい、困っている人には分け与える」
かつてカマドさんに助けてもらったお客さんを含め、当時からお店に来ていた人たちも、大人だった人は年を重ね、子どもだった人は大人になり、今でもお店にかまぼこを買いにきてくれるそうです。
カマドさんは8人の子どもを育て、次女の俊子(としこ)さんを跡継ぎに選びました。俊子さんは10歳のときから店を手伝っていましたが、カマドさんはかまぼこの作り方を一切教えてくれませんでした。それは、「自分の力で味を見定め、作り方を覚えなさい」というカマドさんの考えからでした。俊子さんは、手伝いながら作り方を学び、自分の舌を頼りにカマドさんの味を受けつぎ、その味は俊子さんの子どもたちへと継がれています。
地元で採れるアーサ(アオサ)をかまぼこの生地に練り込む
カマドさんの孫で、俊子さんの息子の大城文博(おおしろ ふみひろ)さんが工場へ案内してくれました。(文博さんは『かみやーき小』店長を務めています)
かまぼこ店の朝は早く、午前2時から作業を始め、朝6時ごろにはかまぼこができあがり配達の準備などに取り掛かかります。
石垣島のかまぼこの魅力は、油で揚げる製造方法にあります。白身魚の旨味や風味がギュッと閉じ込められ、ジューシーで滑らかな食感が特徴です。蒸しかまぼことはまた違った味わいが楽しめます。
白身魚のすり身をミキサーにかけ、調味料と共に具材などを入れ混ぜます。
ミキサーで調味料と具材が程よく混ぜられたすり身のかたまりは、片手に持てるほどのかたまりに分けられ、揚げ担当者が手の中でちぎりながら油の中へと落としていきます。
油の中にちぎり落とされたかまぼこは3回ほど揚げ機の中を通った後、冷却機でゆっくりと時間をかけて冷まします。
石垣島のソウルフードとも言える八重山そば。豚骨や鰹節で作るスープには、かまぼこと豚肉と刻みネギがトッピングされます。昔ながらの素朴な味わいが魅力の「八重山かまぼこ」は、八重山そばには欠かせないトッピングです。
「基本は、島の食材を使い島の人に愛され続ける商品作りをしていくことなのですが、それとともに90年近くこの土地で培ってきたものを、全国に、また世界にも届けて、石垣島の良さを伝えていきたいと思っています」
プロフィール
大城 文博(おおしろ ふみひろ)
1965年4月25日石垣島生まれ
生まれた時から八重山かまぼこに触れる。
1988年 大学卒業後 かみやーき小で働き始める
商工会青年部活動や通り会活動等をを通して人脈や視野を広げる。
常に、お客様が笑顔になれるお手伝いをしていきたい。
» かみやーき小 HP