島のものIsland Products

旧暦に合わせた年間行事が大切に受け継がれている石垣島では、お供え物などに用いるお餅は欠かせない存在です。旧盆や旧正月の他にも旧暦の12月8日には黒糖や紅芋などで味付けをされた餅を月桃で包んで蒸した「ムーチー」を、旧暦8月15日の「十五夜」には、湯であずきをお餅にまぶした「フチャギ」を食します。お供え物として、お祝いの場やそのお返しなどに用いられてきたお餅は、昔の味をそのままに島人に愛され続けています。

二足のわらじでつなぐ

創業60年になる玉城もち屋では、朝3時というまだ日が昇る前の真っ暗な中、餅作りが始まります。嘉手川つる子(かでかわ つるこ)さんと息子の嘉手川清史(かでかわ きよし)さん親子が、お餅の他、じーまみ豆腐、ムーチーなどを昔ながらの製法で丁寧に手作りしています。

先代から受け継いだもち屋も、つる子さんの長女が那覇へ嫁いでしまった後は、閉めることも考えていました。清史さんは、建物の防水塗装業を営んでいましたが、祖母の代から続くもち屋を無くしてしまうわけにはいかないと、仕事を続けながら玉城もち屋を継ぐ覚悟を決めました。

清史さんは、つる子さんと一緒に毎朝3時から11時ごろまでもち屋の仕事をこなし、その後に会社へと向かいます。

「6年前に玉城もち屋を継いだ時は、手順がつかめていなかったので、もっと早い時間から工場に来て仕事をしていました。今は、手順を覚えて無駄をなくし、要領よく動けるようになったので3時から始められるようになりました」

きびきびと働くつる子さんと清史さんの動きには微塵の迷いも無駄もなく、2人の息はぴったりで、次から次へと流れるように仕事が進んでいきます。

餅作り

原料のもち米を水に浸し、粉砕機で細かく砕いたもち米を布袋に入れ、重石を置き水を切ります。

もち米を練り機で練った後に蒸し器で蒸し、最後に餅つき機で練って出来上がりです。

玉城もち屋では、もち粉を使わずに生のもち米を使っています。生のもち米を使用することで作業の手間も増えますが、この手間が柔らかく美味しい餅作りの秘訣なのだそうです。このように手間のかかる作り方をしている工場は石垣島でも県内でも珍しいそうです。

一つずつあんこやすり胡麻餡を入れて丸めていきます。

ジーマミー豆腐

餅作りが一段落すると、清史さんは休むことなくジーマミー豆腐の仕込みに入ります。

ピーナッツのエキスを絞り出し、くず粉と混ぜ合わせ火を通しながらしっかりと練り、ほどよい硬さになったところで型に一つずつ流し込んでいきます。こちらの作業も全てが手作業で進められます。

ごま餅

すり胡麻が餡に入ったお餅は、沖縄県内では石垣島でしか食べられない昔ながらの優しい味わいのお餅です。

今後の目標

「今後の目標は、企業拡大です。工場を大きくして機械をもっと導入できれば、製造量も増やせます。日持ちするパッケージでの販売も目指しています」

プロフィール
嘉手川 清史(カデカワ キヨシ)
石垣第二中学校卒業
防水塗装の会社に就職
2003年防水塗装会社(清工業設立)
今年で創立20年
2017年家業の玉城もち屋を継ぐために、防水ともち屋の二足のわらじ。