約600年の歴史をもつ日本最古の蒸留酒と言われる「泡盛」は、東南アジアにルーツをもち、琉球王朝時代より沖縄独自のお酒として発展し飲み継がれてきました。石垣島には6箇所の酒造所があり、それぞれが個性豊かな唯一無二の泡盛を製造しています。
「仲間酒造」は、石垣島宮良にある小さな酒造所です。地域に根ざした酒造所として1948年に創業し、銘柄『宮之鶴(みやのつる)』の製造を開始しました。『宮之鶴』の宮の字は字名の「宮良」から、鶴の字はその縁起の良さから取り、宮良で造るお酒として鶴のように永年成長発展していきたいという願いが込められています。
現在は、3代目社長の前花晋作(まえはな しんさく)さんにより『宮之鶴』は受け継がれ、大切につくられています。小さな酒造所ということもあり、製造から販売まで、ほぼ全ての作業を晋作さんが1人でこなしています。
この日は、親戚がラベルはりのお手伝いに
晋作さんは、高校卒業までは地元の宮良で過ごし、沖縄本島の大学では機械工学を勉強し、その後就職した先は食品関係の仕事とは別のものでした。しかし、先代から酒造所の継続に限界がきていることを知らされ、この場所をなくしたくないという思いから酒造所を受け継ぐ覚悟をきめました。
「ここは、僕が小さい頃の遊び場でした。お爺ちゃんが作ったこの場所をなくしたくなかったし、僕ならできると思ったんです」と話す晋作さん。
仲間酒造では、創業時から大切に使われ守られてきた設備や道具で『宮之鶴』をつくっています。
施設内の壁は黒麹菌で黒く染まっています。この壁を掃除してしまうとお酒の風味が変わってしまうそうです。先代から受け継がれ、使い込まれた設備と道具でつくる『宮之鶴』は、口あたりがまろやかでやさしく、飲んだ後に広がる奥行きのある甘みが特徴です。
原料となるタイ米は、1回分の300キロを大きな甕で2時間〜3時間ほど浸漬させた後、人が1人横になれるほどの大きさの木製の蒸し器で蒸します。
黒麹菌
蒸し上がった米は温度を調整しながら黒麹菌の根付をし、米麹づくりをおこないます。
出来上がった米麹に酵母と水を混ぜてもろみを仕込み熟成させます。
黒麹菌は、米のでんぷん質を糖に変える役割、酵母は糖をアルコールに変える役割です。
熟成したもろみを昔ながらの地釜式蒸留機を用いて蒸留し、貯蔵タンクで約8ヶ月から10ヶ月ほど熟成させ『宮之鶴』が完成します。
泡盛ベースにオレンジジュースとグレナデンシロップで作るカクテル「泡盛サンライズ」
「仲間酒造所を受け継いで3年が経ち、新たな取り組みとして違う風味のお酒の開発や、海外への輸出などにもチャレンジしてみたいと思っています」
プロフィール
前花 晋作(まえはな しんさく)
1983年 沖縄県石垣島生まれ
仲間酒造所のある宮良村で育ち、幼少期は酒造所が遊び場であった。
2002年 高校卒業後、進学のため石垣島を出る
2019年 石垣島に帰郷、酒造所を法人化し経営と酒造りを引き継ぐ
大切に守られてきた伝統製法を用いて、豊かな風味を持つ泡盛造りを心がけている。