石垣島の食卓には欠かせない島人のご飯の供「油みそ」(あぶらみそ)は、アンランスー、アンダンス、アンダミスー、アンダーミシュとも呼ばれ、ご飯や豆腐に乗せて食べる他、おにぎりの具として中に入れたり、炒め物の調味料として使ったりもします。
八重山の昔ながらの味噌は、米と大豆、塩を使って作られる米味噌です。「油みそ」もこの米味噌をベースに豚肉とその油などを混ぜて作ります。
本来「油みそ」は、各家庭で作られる保存食でした。昔は貴重な食材を無駄なく食すことを目的に、豚肉をさばいた後に残る破片肉や脂身を調理し、味噌とあえて食していました。
「昔の人の知恵だね、味噌は保存がきくでしょ、それに貴重だったお肉も余すことなく無駄なく食べられる。昔から、家庭で作られる「油みそ」は、味付けもそれぞれでみんな違ったよ」と話すのは、石垣島白保集落に小さな工場をかまえる大泊食品の宮良玲子(みやら れいこ)さんです。
玲子さんは、小さな頃から両親のもとで「油みそ」づくりを手伝ってきました。
「お母さんの味は、『聞く、見る、触る、一緒に働く』という形で受け継ぎました。今でも時々ふとした時に、『お母さんはあんな風にやっていたな、こんな風な手つきだったな』などと思い出すことがあります」(玲子さん)
蒸した米に麹菌を混ぜ約一晩温度調整をしながら寝かせます。
その後、米を台の上に広げ、麹菌がしっかりと米に根付くように嶺を作り約1日寝かせます。
この時に米の固まりがないようにむらなく米をほぐすことが滑らかでおいしい味噌をつくるこつです。その後、米に塩を混ぜ込み「塩止め」をします。(大泊食品では「石垣島の塩」を使用しています)
ミンチ状のゆで大豆を米と合わせて樽に入れ熟成させると味噌ができあがります。
小さくさいの目に切られ味付けされた豚肉。白い固まりは、豚肉の脂身。
このシンメー鍋を使って、豚肉、脂身などの具材と調味料を味噌と混ぜ煮詰めると「油みそ」の完成です。
「油みそ」には、昔ながらのシンプルなものから、「しょうが」「島とうがらし」「ピパーチ(島コショウ)」「長命草とパイン」「石垣島産もろみ豚」など、さまざまな食材を入れて作られるものまで豊富な種類があります。
「島の食材と米みそを合わせた新たな商品開発をしていきたいです。母も、『島クース(島とうがらし)』『長命草&パイン』『クロレラ&ハチミツ』『魚(カツオ)』などの島素材と味噌を合わせてアンダーミシュを製造してきました。今後は、五穀米味噌なども使っていきたいと考えています」
プロフィール
宮良玲子(みやら れいこ)
1948年石垣島生まれ、石垣島育ち。
幼少の頃から餅作り(旧大泊餅屋)を手伝う。高校、大学進学のため那覇へ。
帰郷し教員として働く。5人の子どもを育てながら実家の餅屋を手伝う。
父親の他界をきっかけに母親と「大泊食品」として郷土の味「あんまーのアンダミシュ」を製造、販売し現在に至る。