玄米乳は、どこか懐かしさを感じさせる素朴で優しい味わいの飲み物です。
玄米と黒糖とザラメというシンプルな材料で作られ、栄養価が高く、食物繊維などを多く含むことから健康にも良い飲み物として、昔から沖縄の家庭で愛飲されてきました。
八重山物産八徳屋の徳比嘉充(とくひが まこと)さんは、昔から手作業をすること、物作りをすることに興味がありました。小さい頃から馴染み親しんできた玄米乳作りに興味を持っていたところ、新聞記事に掲載されていた元祖製造所の新城玄米乳店の後継ぎ公募を目にし、応募すると、徳比嘉さんの真面目な人柄が新城さんに認められ、玄米乳の製造方法と設備を受け継ぎました。
シンプルな素材を使って作る飲み物なだけに、一つひとつの材料選びが味の決め手につながります。玄米も黒糖も、収穫されるものが毎回同じ味とは限りません。その時期の天候や土壌の具合などにより味が変わります。
徳比嘉さんは、毎年収穫される材料の味をしっかりと確かめ、適した素材を選び、受け継いできた味を試行錯誤しながらつないでいます。
玄米乳作りは、最初に大きな鍋にお湯を沸かし、液状にしたザラメと黒糖をお湯に入れてよく混ぜ合わせます。
一晩水に浸した玄米を水と一緒に粉砕機で細かく挽きます。
水と一緒に粉砕された玄米は、ミルクのように真っ白です。
ザラメと黒糖の入った鍋が沸騰したところに、2回に分けて投入します。この時に、材料がダマにならないようしっかりと大きなヘラを使って混ぜます。
糖度計を使って甘さを確認します。
出来上がった玄米乳は、熱いままボトルに入れる充填作業を行います。紙キャップをした後、棚でゆっくり余熱を冷まします。
ピンクのラップをキャップにつけて完成です。
徳比嘉さんは、昔ながらの紙キャップの商品の他、日持ちのするアルミキャップを使用した「飲む玄米」を開発しました。常温でも保存でき、賞味期限が長くなったことから、島外への持ち出しも可能な商品として石垣島の店頭に並ぶようになりました。
先代の新城さんから製造技術と機材を引き継いだだけでなく、お客さまも引き継ぐことになったのは、自然な流れでした。
「当時は、お客さまから『薄すぎる』『濃すぎる』『前の味と違う』」など、様々なご指摘を受けました。でも『おいしかった』と言ってもらえるようになった時は嬉しかったですね。最近では、子どもから『おいしかった』と言われるととても嬉しいです。子どもは正直だから」と笑顔で語る徳比嘉さん。
日持ちすることから、お供え物やお土産としても人気の「飲む玄米」。ミネラルをたくさん含む黒糖を使用しているので、汗をかく夏場にはもってこいの飲み物です。冬場に温めて飲めば、ほっとする優しい味わいが楽しめます。
「やりたい事はいっぱいあります。まずは、『飲む玄米』を全国にお届けできるようにしたいです。
プロフィール
徳比嘉 充(とくひが まこと)
1974年石垣市生まれ石垣育ち。
高校卒業後、色々な地域の文化や伝統を学び帰郷。
2012年に新城玄米乳を引き継ぎ、現在も悪戦苦闘の毎日。